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卵の管理と孵化

産み付けられた卵を孵化させるには十分な水分と高い温度が不可欠です。この条件下で卵は発生〔孵化するための体作り〕を進め、体が十分に完成したら、はれて孵化をして鳴く虫としての生活を始めます。というのが、一般的な意識であると思います。これにまちがいは無いのですが、実際はもう少し複雑で、前項で説明させていただいた“越冬ステージ”がとても重要な関わりを持ちます。越冬ステージが卵の種類では、その卵を高温で管理し続けても孵化しないことが多いと、簡単に説明させていただきましたが、ここでは、そのメカニズムから説明させていただきます。

 越冬ステージが卵の種類は大まかに、産卵されてすぐに、ある程度まで発生が進み、一時休止します。その後、冬が近づき、冬眠状態になり、翌年、気温が上昇することがきっかけで体内のスイッチが切り替わり、新たに、別段階で発生が進みます。そして、生活する上で必要な体が完成した段階で孵化します。この流れを下記のように表すことができます。

産卵→1次発生→発生停止→休眠〔越冬〕→2次発生→孵化※当然、1次、2次ともに発生にはある程度の温度が必要

一部、種類によっては、不明瞭なこともありますが、基本的に卵で越冬する種類はこの流れに忠実に従い、中には各段階をしっかりと踏まえないと、孵化しない種類もいます。同じく卵越冬種であるキリギリスを例であげてみます。キリギリスの場合、10下旬や11月になって産卵することがあります。このようなケースでは、1次発生が終了する前に、冬が訪れてしまい強制的に休眠状態になります。翌年温度が上昇して、本来なら2次発生に入る段階になっても、1次発生の続きをしなくてはなりません。こうして1次発生が終了して停止状態になりますが、次は低温による休眠の段階を踏まないと、2次発生に進めませんので、そのまま冬を待ちます。そして、二回目の春で初めて2次発生まで進むことができ、はれて孵化します。このように、卵越冬種は孵化までのプロセスをほぼ温度に支配されているといえます。〔※ただし、同じ腹から同時期産まれた卵でも、それに従わない場合もあります。また、キリギリスの場合では孵化までに時に3年以上を費やすこともあるらしいです。〕

これを言い換えれば、冷蔵庫や暖房などを駆使し、人工的に温度を操作することで、孵化を早めたり、遅くすることもできるということになります。ただし、それぞれの段階には、種類によってもことなりますが、最低必要日数というのがあります。ここもキリギリスを例にすると、各段階の発生時期を25度前後に保ち、越冬を10度くらいにすると、1次発生・約4〜5週間、越冬・約7〜9週間、2次発生・約3〜5週間が必要となりますので、産卵から孵化まで最短で、3か月半で可能ということになります。9月下旬に産卵された場合では、1月中旬には子供が採れるという計算になり、野生よりも3か月も早く孵化します。もちろんこれはキリギリスに限った例ですので、種類によってはどうしても5ヵ月ほどかかるものもいますし、逆に2ヵ月ほどで孵化させることができるものもいます。ただし、これには、温度も上手に管理しなくてはならないですし、なにより、その後の成長や交尾・産卵にも温度や日照時間による影響に強く作用し、その時期にしか手に入らない産卵床や餌もありますので、安易に孵化時期を操作することはあまりおススメできません。

クダクダと不要な話まで含まれましたが、要するに、卵越冬種の卵の管理は、自然に任せるのが一番で、上記で説明しました産卵から孵化までの流れは、日本の気候そのものに従ったものなのです。卵が採れたら、乾燥しないように注意して、軒下や庭木の下など雨や日光にさらされない所に放置しておくことをおススメします。ただし寒い地域の場合や頻繁に霜が降りる場所ではそれなりに危険ですので、玄関など室内の最も寒いところに非難させることも必要です。そして、野生下での孵化の時期を目安に、孵化1ヵ月くらい前になったら、室内で孵化の時を待ちます。室内に戻すことで、野生の場合より、若干孵化が早まりますので、早めに、ケースや餌などのことも視野に入れておくと良いでしょう。野生下での孵化の時期は、成虫出現期からマイナス2ヵ月半くらいを目安にすれば、大体は間違いないです。


その他の卵

 2化性種の早期発生型の卵と多化性種の卵についてですが、この両者は基本的に休眠によるスイッチの切替が無いので、産卵後、一定以上の高温を保っていれば、おおよそ3週間から1ヵ月で孵化します。ただし、休眠の必要が無くても、低温下で管理し、強制的に休眠をさせることができる種類もいます。そのような種では冷蔵庫などで、10度くらいで管理するとその間の発生停止し、再び高温下にもどすことで、発生を開始しますので、餌や時期の事情などで、孵化した子をちゃんと育てられそうも無いときには、活用しても良いかもしれません。ただし、あまりに発生が進んでいるにも関わらずいきなり冷蔵庫へ入れると、全滅してしまうこともあるので、注意が必要です。また、産卵直後の状態でいきなり低温にしても危険な場合が多いようです。尚、強制休眠可能な期間については、私自身、あまりに長い期間は試したことが無いのですが、少なくとも半年程度なら目立った影響は見られませんでした。たぶんもっと長くても大丈夫だとは思いますが、特にそこまでする理由も無いでしょうから、なるべく早めに孵化させてあげてください。


卵の保管

 イネ科植物  産卵棒とカップに入れた鈴虫マット

産卵の確認された、産卵床は、上の写真のように保管します。植物類は鉢ごとビニールに入れて輪ゴムで縛ります。産卵棒は、お惣菜用のパックやタッパーウェアに入れ、カップに入れた砂や鈴虫マットの場合はそのまま蓋をします。これらは、ほぼ密封に近い状態になりますが、水分が発散してしまうのを防ぐためです。ただし、お惣菜パックにいれた産卵棒やカップに入れた砂などは、それでも、水分の発散は免れませんので、1ヵ月に1回くらい様子をみて、乾燥しているようなら霧吹きをしてやります。ビニール袋に入れた植物体の場合は、水分の発散の心配は無いですが、同じく1ヵ月に1回くらいはゴムを外し、中の空気を入れ替えてやると良いでしょう。 産ませた卵はこのようにして管理しますが、管理状態にする前に、糞や食べかす・親の死骸の破片などはなるべく丁寧に取り除く必要があります。これらの汚物が多量に付着していると、雑菌・カビが大量発生し、孵化に支障を来たす場合があります。逆にどんなにきれいにしても、多少のカビが発生してしまうのは仕方の無いことですので、ところどころにカビが見える程度ならあまり神経質にならなくても大丈夫です。


孵化

孵化した子は、親と同じように通常飼育をしますが、指で触れるとつぶれてしまったり、急速に弱ってしまいますので、移動が困難です。そこで、卵の管理状態から孵化が確認されたら、産卵床を袋やお惣菜パックから出し、そのまま飼育ケースの中に配置します。カップに入れた鈴虫マットの場合は、蓋を外した状態で配置します。孵化は最初の子供が生まれてから3日もすれば、ほぼ全ての卵が孵化したことになりますが、生まれた子供がある程度、成長するまでは、産卵床ごと同じケースに入れておくと良いでしょう。まだ小さい子供は極端に乾燥に弱く、且つ、蓋の隙間から簡単に脱走をしてしまいますので、ケースと蓋の間に、通気穴を開けたビニールや、コバエ防止シートをかませて飼育します。その他は、成体の飼育法を基本に各種見合った方法で飼育します。

   

孵化が始まり飼育ケースの中に産卵床を入れたところ。 右写真は、その産卵床から一斉に子供が出てきたところ。〔コガタコオロギ〕


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